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目黒にて、居酒屋を語る
目黒と居酒屋。“高級感”、“おしゃれ”、“落ち着いた大人の雰囲気”といったパブリックイメージが色濃い前者に対して、おそらく後者は“うまい”、“安い”、“気軽に立ち寄れる”などの言葉が連想されるように思います。洗練された街が、さながら市井と化すのは居酒屋の持つ、容易には筆舌しがたい親しみやすさがあるからこそ。ということで、このチャーム、ダイナミズムにあえて言及します。そう、「目黒ほろよい党」 プレゼンツ「目黒にて、居酒屋を語る」と称した本ページにてフォーカスするというわけです。日本酒、焼酎、立ち飲み……おすすめしたいトピックの連続。ぜひ、くまなく読んでみてください。
居酒屋には欠かせない!日本酒について
居酒屋には多くの日本酒が並んでいるものです。同様に飲み方ひとつをとっても様々なタイプがあります。
食中酒ブームを経て、各地でのイベントも活況を呈し、幅広い層から支持を得ていることがいよいよ如実に分かってきた中、ここをピックアップしないわけにはいきません!温度、味わい、種類、グラスにラベル……。
「こだわりの品質」「飲み比べセット」、こうした惹句やメニューももはや定番です。「剣菱」「獺祭(だっさい)」「十四代」「飛露喜」「鳳凰美田」「鍋島」といったお馴染みの銘酒から、「紀土」「高千代(たかちよ)」「智恵美人(ちえびじん)」「賀茂金秀(かもきんしゅう)」など(すでに押さえている方も多いと思いますが)今のうちに注目しておきたいものまで、挙げればキリがない美酒の数々。これらを例に出すまでもなく、魅惑のドリンクであることは自明の理といえるでしょう。奥深さもまた然りです。
「もっきり」のごとく溢れる魅力は無尽蔵。これまで知り得なかった一杯、楽しみ方との邂逅によって、日本酒への興味がさらに増すことになればうれしいですね。
温度変化を楽しむ!
日本酒は温度を変えることで様々なテイストを楽しむことができます。まずは、冷酒。おおよそ5~15度の温度帯です。5度で「雪冷え」、10度で「花冷え」、15度で「涼冷え」とそれぞれの区分で呼び名があります。香りや味わいの広がり方に違いを覚えることができるでしょう。※くれぐれも冷やし過ぎにはご注意を!
そして、滋味にやわらかさが感じられる20度の「常温(冷や)」、30度の「日向燗」、35度の「人肌燗」、40度の「ぬる燗」と、温度が上がるにつれて芳醇な旨みが顕著になっていくのが分かるはずです。続いて、45度の「上燗」で引き締まる香りに。50度の「熱燗」でさらにシャープに、55度の「飛び切り燗」でより強く、辛口に。これだけバリエーションがあるということは、好みの発掘もまた一興。冷やしたり、温めたり、蒸し癇スタイルも無視できない!ぜひ、色々と試してほしいですね。
特定名称酒って!?
お酒は製造法により3種類に分類されます。蒸留酒、混成酒、そして日本酒が該当する醸造酒。その中で、原料や製法によって所定の基準、条件を満たした清酒が「特定名称酒」といわれるものです。使用原料、精米歩合(白米の玄米に対する重さの割合)の違いによって、8種類に分けられます。米、米こうじ、醸造アルコールを原料として使い、精米歩合60%以下の吟醸造りの日本酒が「吟醸酒」です。冷やしても温めても楽しめます。同じく、使用される原料は米、米こうじ、醸造アルコール、精米歩合は50%以下の吟醸造りの日本酒が「大吟醸酒」です。華やかな香りが特徴的。「純米酒」の使用原料は、米と米こうじのみ。それが60%以下の精米歩合、または特別な醸造方法になると、「特別純米酒」と呼ばれます。コク深いものが多く、燗酒におすすめです。「純米吟醸酒」「純米大吟醸酒」も、原料は「純米酒」と同様。これら2種は、その名の通り吟醸造りの日本酒です。「本醸造酒」は、70%以下の精米歩合。原料は米、米こうじ、醸造アルコールです。60%以下の精米歩合、または特別な醸造方法の場合「特別本醸造酒」となります。すっきりした味わいと色沢の良さが秀逸!
ラベルで計る自分の好み!?
ここではラベルの基礎知識をご紹介。通だけでなく、初心者の方も好みやお気に入りの傾向を見つけるのに役に立つはず!気になるあいつ、あの子の背番号はいかに!?
「酒米生産者」。米の栽培から酒蔵が携わるトレンドは、今や生産者名だけでなく、地域名、さらには畑まで明記するほどに加速。「火入れ」。60~65度のお湯を使い、間接的に熱を加えることで酵素の働きを止める作業のことです。通常、2回行われます。尚、まったく火入れをしない「生酒」や、酒をしぼってタンクに貯蔵する前に一度火入れして、その後そのまま瓶に詰める「生詰め」などもあります。「酒米」。酒造好適米と呼ばれる一般米と区別される原料です。特有の品質が求められます。「酒米の王様」と称される「山田錦」が代表的ですね。一方で近年は、地元農家の特性、生産の安定性からローカル酒米を使う蔵も増えているといいます。「酵母」。アルコール生成の主役です。例えば、7号だと癇向き、9号系であれば吟醸向きなどといわれます。「アミノ酸度」。米のタンパク質が分解されることで生じるアミノ酸の総量を指します。旨みを表しているのですが、あまり多くなり過ぎると雑味に変わるので注意です。「酸度」。日本酒に含まれる、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸や乳酸など酸の総量を示したもの。味のキレやハリに影響してきます。「日本酒度」。甘口、辛口のひとつの目安。一般的に低いほどブドウ糖が多くなるので甘いとされています。酸度とのバランスも大事。同じ日本酒度であっても舌での感じ方は変わってきます。と、ざっとこんな感じです。日本酒の味を決める要素は、実に様々であるということが分かりますね。
居酒屋にある焼酎という名の小宇宙
居酒屋を語るのに焼酎も外せません。ここへの目配り、つまりはラインナップがお店選びを左右するケースもあるでしょう。その飲み屋の全容を示唆するまさに小宇宙。響きだけでなく概念さえも近いものを感じます(ちょっと無理がありましたかね?笑)。
さて、焼酎は日本酒の段で触れたお酒の種類でいうと蒸留酒に該当します。
甲類、乙類と分かれ、中には「混和焼酎」と呼ばれるものも。日本酒同様、あらゆる形で存在しています。とはいえ“甲乙”つけ難い!(決して軽口ではなくその飲み口についてですが、、、笑)。極上の一杯を見つけるにはしっかり吟味しないといけませんね。
名称の違い
そのむかし、「新式焼酎」という名で知られた焼酎甲類。かつてそう呼ばれたのは、伝統に対するいわば革新の意味がありました。単式ではなく連続式蒸留機を使った製法で、高純度のアルコールを生成。製法よろしく「連続式蒸留焼酎」という呼称も今では一般的になっています。透明感とすっきりした味わいが特徴です。アルコール度数は36%未満に規定。ゆえに飲みやすく、チューハイ、サワー、カクテル、果実酒と、幅広い楽しみ方ができる可能性に満ちた焼酎です。一方で、「旧式焼酎」が焼酎乙類(単式蒸留焼酎)です。アルコール度数は45%以下。米、麦、芋、黒糖、蕎麦などが使われます。おそらく多くの方が耳慣れているであろう「本格焼酎」という呼び名もこちらに該当。飲み方はロックやお湯割りを推奨。焼酎本来の滋味を楽しめます。クセのない前者、香り豊かな後者。両者の長所を生かすべくブレンドされた「混和焼酎」というものもあります。※日本酒造組合中央会ならびに日本蒸留酒酒造組合の自主基準により記載は細分化されています(「甲類乙類混和」「乙類甲類混和」など)。
洒脱に映えるスマートなグラス
有田焼や江戸切子などの焼酎グラス。最近はプレゼントでも好評を博しています。美味しくはもちろん、おしゃれに楽しむのが通の嗜み方。そもそも、美味しく飲むための大事な要素でもあるのです。例えば、お湯割りは温かいまま、水割りは冷たいままの温度を保ちたいと思いますよね。信頼に足るあの居酒屋がそうであるように、焼酎の特性を考慮した工夫がさりげなくも器に施されているのです。ということで、グラスにこだわるのも妙趣です。うっとりするぐらいに美しい珠玉の一杯を、今宵もどうぞご堪能ください。
居酒屋に行って立ち飲みしたい!
居酒屋にてちょっとしたセンセーションが起きているとすれば、おそらく一人飲み、そして立ち飲みブームなのではないでしょうか。そしてここでは後者をフィーチャーしたいと思います。
以前は“疲れたサラリーマンがふらっと立ち寄って一杯”のようなイメージだったのが、最近は老若男女がマルチに躍動。もちろん、実際のところ幅広い層で賑わうことは今にはじまったわけではないにせよ、ちょっと違うのです。これって何だろう……。
そうか、お店のスタンスか。親しみやすさはそのままに料理のオリジナリティ、豊富なお酒、心地良い環境、雰囲気、佇まい、色気、そしてそれらが多彩。そこであらためて思う、「大衆酒場ってそういうことですよね。」
立ち飲みの持つポテンシャルを再確認した、とある一日、目黒の夜。個室でくつろぐのもいいけれど、心が和む俺たちのフィールドはここにもあった。仲間との待ち合わせにはもってこい、新たな出会いにも繋がるとくれば、ワクワク感が募るのも当然。巷で耳にするニューウェーブとは言い得て妙だな、と。魅力湛える空間はこの先もどんどん広がっていくことでしょう。
メニューの柔軟性
絶賛品質向上中。そんなムードが業界全体において垣間見える気がします。華やかなメニュー、立ちワインでほっこりできる場所も決して珍しくないのでは!?
鮮やかな世代交代
“安い”、“うまい”の簡易的な飲みスタイルから時に優雅なものまで、先人達の積年のアイデアが若い新世代によって花開かれた感じを覚えます。すなわち、居酒屋自体がそうであるように、立ち飲みにおけるオーセンティックな魅力は、日々進化し続けているのです。
居酒屋では創作料理にも注目すべき!
「居酒屋メニューとは思えないクオリティの高さ!」
そんな常套句がお決まりの賛辞になりつつある昨今、つまりは前提が変わってきているということがいえるのではないでしょうか。そう、酒場といえど侮れない!食材からのこだわり、料理も逸品揃いに加え、和食、洋食、中華、韓国料理……、その幅広さも顕著です。各ジャンルをクロスオーバーする絶品創作料理の数々。美味しいものを食べたいなら狙い目です。スイーツにも意匠を凝らしていたり、飲み放題だけでなく食べ放題も付いてくるコースがあったり。濃厚なグルメ体験を居酒屋でぜひ!
ディナーにも使える!
晩ご飯を外食でと考える際に、居酒屋という選択肢はどうでしょう。お酒ありきではなく、料理目当てで!
宴会コースではなく、普段のディナーとして郷土料理や名物を食す贅沢。“東京で食べられる九州料理”、“目黒で満喫する京料理”などなど気になるフレーズがあればお一人様でも飛び込んじゃって。
一度体験すれば、案外クセになるものです。
お酒との組み合わせ
メニューが充実すれば、その分ペアリングもバリエーションが増えるわけです。唐揚げやお刺身、ポテトサラダといった定番のおつまみに合わせる、日本酒、焼酎、泡盛、果実酒、ワイン……などなど。お肉、うどん、チャーハンと一緒にビールをゴクゴク。
一期一会のエキサイティング!美味しい料理とお酒、居心地の良い空間も相まって、有意義なグルメタイムを過ごすことができるでしょう。
居酒屋は2軒目使いにもおすすめ
例えばビジネスシーン。幹事に抜擢されたなら、お店選びは慎重に行いたいところ。そして、プライベート。ここでも大切な場面は訪れるわけですから、普段からチェックしておくことが大事だと思います。
そうした中で、本ページ通して述べてきたことを踏まえていうと、どうしたって候補から外せないのが居酒屋です。宴会・飲み会、接待など利用シーンにかかわらず手札の一枚には入れておきたいもの。二次会、三次会、デートの2軒目に使うことだってありますよね。エリアによっては、酒場巡りのはしご酒も楽しそう。いざとなったら活用したい、仲間と夜更けに賑わう秘密基地のような雰囲気を醸すとっておきの場所も切り札として忍ばせておいたほうがいいですね。
汲めども尽きぬシチュエーション。各々の日常のドラマの中で舞台となる憩いのグルメスポット。居酒屋って素晴らしい!
次のお店どうする!?
デートでも飲み会でも、2軒目にはちょっと落ち着いた居酒屋を試してみませんか。
仮に最初のお店のチョイスをミスしたとしても、リカバリーするのに丁度いい環境だと考えます。それは決して守りに入るわけでなく、絶品料理やうまいお酒をカジュアルに謳歌できれば、それこそが贅沢、ひいては貴重な体験だと思うのです。何よりもその時間を共有することが大事。ということで2軒目には、自然と会話が弾む空間、すなわち居酒屋で至福のひとときをお過ごしください。
一人飲みが出会いを引き寄せる!
ワイワイ賑やかなパーティーや合コンから一転、2軒目は居酒屋でしっとり一人飲みなんてどうでしょう。佳肴と美酒を気ままに頼める自由がある一方で、スマートに「一杯飲み」する紳士と淑女の姿にも憧憬の念を抱きます。ここからはじまる様々な出会い。案外、1軒目よりも期待ができるかもしれませんよ。公私ともに潤いを!
そういうわけで、男性、女性、常連も一見さんも垣根を越えて集える居酒屋は、やはり偉大なのだと思います。
執筆者
- ヒゴ
不肖、グルメライター。
過去には音楽や映画についての記事を書いてきました。
居酒屋で飲むと大体終電逃しています。
目指すは、一杯飲み!